第10回 藤さんの旅と人と食と~山形県鶴岡―何も考えない贅沢な旅-~

山形県には2つの空港があって、北側にある庄内空港が鶴岡の玄関口。
鶴岡は日本有数の稲作地帯で、見渡す限り水田が拡がる。裏返すと、何もない田舎の風景。

宿泊は、その名もSUIDEN TERRACE(水田テラス)。
なんと水田の上にホテルを建ててしまったという代物。実際はそこで米作りはしておらず浅い池のようなものだと思いますが、周囲の田んぼとの風景と違和感のない景色は強いインパクトを覚える。

部屋のバルコニーの椅子に腰かけて、水面に映る青空や雲の光景をじっと見つめていると、穏やかで静かな気持ちになる。ロビーの横には図書館のように本が並び、宿泊客は自由に手に取ることができる。しかもホテル内には違うコンセプトの読書室が他にもある。オレンジ色のほんのりとした光はやさしく、ここは「何も考えない時間を過ごす」贅沢さにあふれている。

車で15分くらい走ると、加茂水族館がある。今でこそ日本有数のクラゲ水族館として有名になったが、ここも日本の地方の施設によくあるケースで、一時は閉鎖の危機に陥ったが、従業員たちが苦肉の策ですでに飼育していたクラゲに特化した水族館にしたいという熱いアイデアを出して、見事にクラゲ水族館として蘇った歴史がある。
確かに飽きない、ずっと見ていたい。クラゲの形や動きがどれも愛らしく、しかも団体で仲良く泳ぐ姿を見ていると、知らない間に心が鎮まってくる。年間パスポートもあって、もしこの水族館の近くに住んでいたら絶対に買って、落ち込んだ日や苛立ったときに一人で来るのにと本気で思った。

鶴岡から1時間近く車で移動して、霊峰・出羽山へ。長い石段を下りていくと、道沿いにたくさんの祠があって、歴史ある五重塔も見ることができる。パワースポットとして有名な場所で確かに歩いているだけで、心が軽くなっていくような気がする。時間があったら出羽三山全部を参詣したかったけれど今回はここまでで引き返す。

お昼は有名な酒田ラーメンを堪能。街中にほとんど人は歩いていないようなのに、お店に入ると満席。酒田市はこれもまた日本有数のラーメン激戦地だそう。酒田のラーメンはワンタンが入っているラーメンが定番だそう。あっさりしょうゆ味でツルっと美味しくいただきました。

何もないということは、心の中の色々な思いをたくさん吸い取ってくれる余地があるということ。そして訪れた人の心は軽くなっていく。心が軽くなるから考えない時間の心地よさを味わえる。今回の山形・鶴岡はそんな贅沢な旅でした。

執筆:藤さん
   ビジネスマンとして世界各国への出張を30年以上続けながら、趣味の旅行でもあちこちに出かける好奇心旺盛なアラ還男子。
   山本代表の長年の友人で、ぼちぼちと旅のコラムをおもびよのブログで書いています。