第8回藤さんの旅と食と人と~イタリア-カラフル紀行-(前編)~

初めてイタリアを訪れたのは2016年。もう8年も前のことなのに、目にした美しい街並みや芸術作品の数々はいまだに鮮明に僕の脳裏に焼き付いている。

最初の地はミラノ。ミラノの中心部の駅前広場にそびえるミラノ大聖堂が見えるカフェでビールを飲みながら昼食にシーフードパスタを食べる。ドゥオモと呼ばれるカトリック建築の洗練された尖塔が印象的だ。聖堂の中に入ると、ちょうどミサが行われていて、奏でられているパイプオルガンの音色に気が引き締まった。

続いて石畳の通りを歩く。旧い建物の間を縫うようにトリムが走り、どこを取っても美しい。
ミラノはレオナルドダビンチの故郷でもある。彼の功績を讃える数多くの記念館が点在する中、サンタマリア・デッレ・グラツィエ協会に保存される巨大な壁画『最後の晩餐』を見る。かつてはドメニコ修道院の食堂だったというこの場所に、予約していた10名くらいの客と入る。
無造作なほどにあっけなくその姿を現したその大きな絵は、一人一人の視線、テーブルの上に隅々まで描かれた食べ物まで、視線を焼き付ける。

ミラノの多くのバーやパブでは夕方からアペリティーボと呼ばれる、日本でいうハッピーアワーのような慣習があり、色々な店で少し飲んではホッピングするのがおしゃれな飲み方らしい。それにしたがって目についたバーに入る。通常より安いワインを簡単な酢の物のおかずを肴にいただく。店の中には同じくお酒を楽しむ客が数人。3軒ほどはしごして、最後の店でピザやミラノ名物のカツレツを頂いたら夜ご飯は十分だ。

ベネチア―ミラノで2日間過ごした3日の朝、高速鉄道に乗って、車窓から見えるワイン畑などの風景を楽しみながら、サンタルチア駅に到着したのは午後3時頃。ターミナルを出ると、明るい日差しの中、すぐ近くにゴンドラがいきかう海が見える。カラフルな果物屋さんや土産物屋が並び活気にあふれる。

世界一美しいと言われるサンマルコ広場のベンチに腰掛け、列車の旅の疲れを癒す。
何年か後、ここまで浸水となったニュースを見て心を痛めた。

僕達もゴンドラに乗り込む。青いボーダーシャツを着た陽気なマドロスがイタリアンジョーク(?)を交えながら、複雑に入り組んだ水路を縦横無尽に漕いで、海にも出る。
東京でディズニーシーにいるみたいだと思うあたりが発想の貧困さか。

翌日の朝、強い日差しが青い海に反射する中、私は次の目的地であるフレンツェを目指した。

執筆:藤さん
   ビジネスマンとして世界各国への出張を30年以上続けながら、趣味の旅行でもあちこちに出かける好奇心旺盛なアラ還男子。
   山本代表の長年の友人で、ぼちぼちと旅のコラムをおもびよのブログで書いています。