第1回 藤さんの旅と食と人と~韓国・オムニのチヂミ~

 はじめまして、藤さんと申します。サラリーマン歴40年近くでそのほとんどを営業の仕事に携わり、国内外の出張で過ごす生活を続けてきました。
プライベートでの旅行も大好きで、これまでずいぶん色々な場所にでかけ、美味しいものや美しい風景や人と出会ってきました。
このたび、合同会社おもびよの山本社長より、コラムに掲載するチャンスをいただきましたので、様々な出会いについてゆるく綴らせていただきます。
気楽にお楽しみ頂ければ幸いです。

 第一回は、初めて、韓国で結婚式に出席した話。
韓国人の後輩は黒いタキシードに身を包み、その隣には純白のウエディングドレスをまとった花嫁が並びます。長身の二人はスタイルもよく文字通り韓流スターのよう。式の最後に、新郎はそれぞれの両親の前にひざまずき深々とお辞儀をしたあと、チマチョゴリを着た母親に花束を渡します。お国には違えど涙腺が緩んできます。

そして実は新郎のお母様とは以前にもお会いしたことがあります。

ソウルから新幹線で1時間ほどの清州という町に新郎の実家はあって、ご夫婦で登山客相手に食事を提供するレストランを経営されています。
そこへ2回ほど彼が連れて行ってくれました。少し高台にあるそのお店のテラス席からは大きな池が望め、春は池の周りの桜が綺麗だそうです。
ご主人はおとなしい方で、お母さんが料理から何から一手にお店を切り盛りされていました。優しい笑顔で私達を温かく迎え入れてくださり、急に伺ったにもかかわらず、食べきれないほどの料理が机の上に並びました。
その中でも圧巻は、チヂミ。

まるでお好み焼きのように肉厚で、野菜や海鮮がぎっしり詰まったカリカリほくほくのチヂミはまさに、オムニ(母親)の料理でした。そして困ったことにお金を受け取ってもらえない。何度も食い下がる私達に、今回は受け取れないとの一点張りで。

あのときの威勢のいい感じのお母様とは違って、今日は緊張の面持ちで、新郎新婦と一緒に私達のテーブルにご挨拶に回ってこられました。私が「チュカヘヨ(おめでとう)」と言ったあとにあのときのチヂミの味が忘れられないことを伝えると少し照れながら一礼されました。

またいつか、オムニが作るあのチヂミを食べてみたいなあ。